コル・タマリエとの出会い
2018年1月に大阪某所の試飲会で初めてこのワインと出会ったのを覚えている。salvis をオープンする前である。今までに経験した、ペティアン、フリッツァンテのどれともちがっていた。あまりに衝撃的過ぎて、お行儀がよくないかもしれないが、その会が終わるまでに3回試飲して再確認したほどだった。「なんて心地の良いワインなんだろう、飲めば飲むほど新しい表情を浮かべてくるじゃないか。」私は約20年程ワインを扱う仕事に就いているが、これほど体の隅々まで爪あとを残された事がなかったし、後ろ髪を引かれまくって正直焦ってしまった。確実に心臓がドキドキしていたのだ。
今ここで味の分析だのテイスティングコメントを残すというよりは、実際に体で感じて欲しいタイプのワイン。すぐにドハマりしないかもしれないし、30分後や、翌日にその良さがジワジワやってくるかもしれない。葡萄の品種特性や、醸造のスペックだけでは計りえないワインと年に数回だけ出会うことがある。引き算の美学の中に、無数のアプローチが施されていて、実験段階であるにせよ、彼らがその時々で舵をきったワインに対する思いやりや、潔さのような、言葉にしにくい優しい感覚が、国境を越えた飲み手をひきつけているのだとしたら… 世界中でタマリエが飲まれれば、無意味な争いがなくなるんじゃないだろうか。とか。
この会を終えるころ、現場に居合わせたエージェントの社長さんに、「今年中にワインショップをオープンする予定なので、このコルタマリエをお店の顔として扱わしてほしいです。」とお願いしてみたところ、私との温度差もあり多少ひいた表情でいらしたが、快く承諾してくだっさって今に至る。年々人気が出て確保できる数も少なくなってきたが、あれから4年、今でも salvis の不動のエースといえば、このコル・タマリエなのである。